私たちの身の回りには、郷土の風土と歴史に育まれた伝統的技法によって作られ、暮らしに密着してきた工芸品があります。
こうした工芸品には、現代的な大量生産された商品にはない愛着、安らぎ、潤いが感じられます。七月三十一日、通商産業大臣から日本の伝統的工芸品として指定を受けた「甲州手彫印章」もその一つです。
 この指定で「甲州手彫印章」は、西陣織や九谷焼、輪島塗といった日本を代表する工芸品と共に肩を並べることになりました。
 甲州手彫印章は、江戸時代から水晶、水牛、ツゲなどを材料に職人の卓越した技術によって高い評価を得て、全国的に販売されました。特に水晶印は、ほかでは真似のできないという意味で「唯一無二」と呼ばれ、華やかな趣きがあります。
 県内では、日本の伝統的工芸品に「甲州水晶貴石細工」と「甲州印伝」が既に指定を受けています。
 また県では、この他に「甲州雨畑硯」「西島手漉和紙」「市川大門手漉和紙」など九品目を郷土伝統工芸品として認定しています。こうした伝統的な工芸品のほかに、県内にはワイン、織物、研磨宝飾など、地場産品として私たちの暮らしを豊かにしてくれる製品が数々あります。山梨県ならではの地場産品のすばらしさをあらためて見つけてみてはいかがでしょうか。


名の由来は“印度伝来”によると言われ鹿皮を素材とし、藁と松根を焼きその煙りでいぶす燻べ技法、型紙を替え色を重ねる更紗技法、漆で模様をつける漆付け技法がある。
戦国時代には鎧や兜を飾り、江戸時代に袋ものなどとして伝承され、現在は財布、バッグなどの製品がファッション性に富み人気のブランドになりつつある。


起源は16世紀に発祥した水晶細工といわれ、江戸時代には金峰山での水晶発見に伴い盛んになった。水晶、めのう、ひすいなどの原石を材料にタガネ等を用いてカキ込みを行い、深肉彫り、浮き出し彫り、透かし彫りを手作業で行い置物などを作りだす。現在では水晶を扱う技術が最先端のパーツ「水晶発振子」に生かされている。


■ワインは、文明開化の明治初期から生産が始まり、長いブドウ生産の歴史を踏まえて、日本一の生産を誇っています。
甲府盆地のなだらかな丘陵地帯が、山梨のワインづくりを支えています。
■織物は、「甲斐絹」の伝統を受け継ぎ、郡内地域を中心に、現在「甲州織」の統一ブランドのもと、服裏地、夜具地、座布団地、洋傘地の素材から、マフラー、ネクタイなどの完成品まで多種多様な製品に実を結んでいます。
■研磨宝飾は、江戸時代末期に甲府市が水晶の産地であったため、その研磨加工の技術が普及したのが始まり。
やがて貴金属工業が誕生し、宝飾のデザイン・加工へと発展しています。


 自宅の一室に父が座り、続く隣の部屋では兄弟が向き合って黙々と手彫りの作業を進めている。六郷町の上田隆資さん(六十七)さんと息子の昭人さん(三十六)、隆仁さん(三十三)の仕事場だ。
 上田隆資さん(雅号・楠瑞)は手彫りの技術を十三年間叔父のもとで修行、昭和三十七年に地元・六郷にもどり印刻の道へと入った。以来、約四十年間にわたり甲州手彫印章の製作を続けその技術は「山梨の名工」「一級技能士」として評価されている。
 印章は文字が左文字(逆版)で表現されるが、この甲州手彫印章の特徴はその文字を直接筆で素材の石に書き、彫っていくことにある。文字の数は五百から六百だが、書体はさまざまありその文字を左文字にして彫るという熟練を
要する作業だ。文字の線をつなぎ合わせ出来たものは、文字というより不思議な線の連続模様でそれをミクロの彫りでつなぐ。キャリアを積み書体をアレンジすることが出来るようになれば、完成した印影の味わいは深く二つとない〈唯一無二〉のものになるという。これまで日展に入選するなど篆刻の世界でも受賞を重ねている。
 後継者となる息子たちにかける言葉は少ない。昭人さんは、「親父の仕事を見て、覚えろってことですね」と一言。
 


11月まで〈地場産業総合フェスティバル〉を開催!! 会場は県内地場産業振興センター
甲府・国中地域地場産業振興センター
甲府市東光寺
Tel: 055-237-1641
富士川ふるさと工芸館
身延町
Tel: 05566-2-5424
郡内地域地場産業振興センター
富士吉田市
Tel: 0555-24-4406