2000年度 9 102
ジャンル2 
記事タイトル大短時間労働者雇用管理改善等事業 
記事タイトル中?パートタイム労働者の雇用管理の改善に向けて(第5回)? 
記事タイトル小パートタイムQ & A 
著作者 
記事内容
Q労働安全衛生法における企業の健康診断とは A→事業主の安全配慮義務  職場で働く者は、通常の場合、事業主の指定した場所に配置され、事業主の供給する施設、器具等を用いて労務の提供を行うものです。
 そこで事業主は、このような労働契約関係に付随する義務として、労働者が労務提供のために事業主の設置する場所、設備若しくは器具等を使用し、又は事業主の指示の下に労務を提供する過程において、労働者の生命・身体及び健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務である安全配慮義務を負っています。
 この安全配慮義務の内容も、労働災害事故といった安全関係の面だけでなく、職業性疾病(いわゆる職業病)といった衛生面についても次第に認められるようになってきました。
今や衛生面においても健康障害の防止義務として定着しているといえます。
 それは、物的施設や環境上の健康障害防止義務だけではなく職業性又は災害性の疾病に罹患していることが判明し、又はそのことを予見しうべき職員に対しては、事業主は疾病の病勢が増悪することのないように、疾病の性質や程度に応じて速やかに就業の禁止又は制限等を行うことはもとより、場合によっては勤務又は担当職務の変更を行う等適切な措置を講ずべき注意義務を負っているように、労務管理上の配慮義務にも及んでいます。
→私病への企業の健康管理義務  事業主は、上記のような職場環境や業務内容自体の有害要因に起因するいわゆる職業病の発症や増悪防止義務にとどまらず、企業の従業員に対する安全配慮義務としての健康管理義務について、もともとは個人が行うべき私病にも、事業主の命ずる業務命令によってそれが悪化し重篤な健康障害に至るおそれのある場合には、労務管理上の配慮を行うべき義務として認められるようになりました。
 それは、わが国の安衛法が罰則をもって事業主に対し雇入れ時及び毎年定期の健康診断義務を課し、上記健診の結果、労働者の健康保持のため必要があると認めるときは、就業の場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければならないことを定め、心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれのあるものにかかった者に対し就業の禁止措置をとるべきことを定めていることなどから、その前提としての使用従属関係における信義則上の配慮義務として、私病についても業務の過重荷負により、疾病を発症させ、あるいは増悪させることを回避すべき労務管理上の措置をとるべき安全配慮義務が認められるようになってきました。
 さらに、安衛法・安衛則の改正により健診項目が、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査、血糖検査心電図検査といったように個人的な健康状態の把握につきいっそう充実され、その後も一般検診結果の労働者への通知義務が新設され、健診結果についての医師等からの意見聴取義務とその結果に基づく配転等の措置義務及び異常所見の診断された者に対する就業上の措置に関する指針の公示といった事業主の労働者に対する健康管理措置が拡充されてきました。
 これは、労働者の高齢化の進展等と産業構造の変化、技術革新等により労働の態様に変化が生じている中で、疲労、ストレスを感じる労働者が増加し、いわゆる過労死が発生する状況の中において、事業主が労働者の健康状態を的確に把握し、その結果に基づき、医学的知見を踏まえて、労働者の健康管理を適切に講ずることが不可欠とされたためです。
 そして、現在では、事業主は労働者を雇用して自らの管理下に置き、その労働力を利用して企業活動を行っているものであるから、その過程において労働者の生命、健康が損なわれることのないよう、安全を確保するための措置を講ずべき雇用契約に付随する義務(安全配慮義務)を負っているとされます。
したがって、労働者が現に健康を害し、そのため当該業務にそのまま従事するときには、健康を保持する上で問題があり、若しくは健康を悪化させるおそれがあると認められるときには適切な措置を講ずべき義務として、具体的なケースによっては安全配慮義務が認められるようになってきたといえます。
→健康管理義務の内容  事業主の安全配慮義務としての健康管理義務の内容の主たるものは、次のように考えられます。
1 健康診断義務   法定の健診項目の健診を行わず、健康診断個人票の作成義務も怠ったことについて損害賠償責任が認められています。
2 配置上の健康配慮義務   健診結果により素因、基礎疾病等からみて労働者の健康に著しく不適格な業務が予見しうる場合にはそれを回避し、又は従事後に予見された場合の配転等の措置義務です。
3 健診結果の措置義務   健診結果及び事業主の把握した労働者の健康状態から、そのまま就業するときは著しい健康の悪化が予見されるときの適切な措置をとるべき義務があります。
4 健康侵害防止義務   いわゆる過労死や過労自殺ということで社会的に問題となっている事実が最近ありますが、事業主には、労働者の労働時間及び労働状況を把握して、著しく過剰な長時間労働によりその健康が侵害されないよう配慮すべき義務があります。
  ただし、脳出血や心臓疾患などは、本来は私病なので事業主が健診で把握しているか、本人の申出等によって予見することが可能な場合でなけれは、健康な一般労働者に対する配慮以上の配慮義務は負わないと考えられます。
→メンタルヘルス管理  労働省では平成元年の安衛法の改正による労働者の健康保持増進対策として「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」を策定するとともに「心とからだの健康づくり」を定めトータル・ヘルス・プロモーション・プラン(T・H・P)を推進しています。
その中で「メンタルヘルス・ケア」と「ストレス対策」も取り上げ、促進しています。
 メンタルヘルスは、労働者個人の健康管理の問題であるとともに、職場においても労働意欲低下、作業能率低下、欠勤等を生じ事故や職場規律さらには、名誉・信用の毀損といった業務への影響が生じますので、身体的な健康管理とともに重視すべき事項として取り上げられてきています。
→労働者の自己保健義務  健康管理義務の場合については、もともと労働者個人の素因、基礎疾病、既存疾病といった労働者自身の有する発症・増悪要因と業務命令上の事業主の安全配慮義務との関係と解されていますので、まず第一に労働者自身の自分で自己の健康を保持すべき義務が問われます。
 すなわち、自己の健康については、自己自身が常に心掛けておかねばならぬことはいうまでもない。
なるほど、定期健診の結果、異常がないとされた場合、通常その者がこれに依拠して行動することは確かです。
しかし、そうとはいえ定期健診後は全面的にその結果にのみ依拠して行動し、自身は健康に留意しないというのは不当なるべきことは明らかであるとされているところです。
 また、一般に事業主としては、健診結果により通常の業務上の配慮で足り、事業主は、労働者の安全と健康につき配慮すべき義務も一般的かつ無制限の庇護義務的なものではないから、本人が勤務中身体の不調を上司に訴えるとか肉体的精神的疲労を理由に休暇を申出る等のない限り、上司や同僚も身体の不調に気付かず、精密健診の強制等本人に対する安全配慮義務の違背は認められないことになります。
 そこで、労働者として次のような自己保健義務を負うと考えられます。
1 既往症・業務歴(素因)等の申告義務 2 健康診断の受診義務 3 自覚症状及び他党症状その他健康異常の申出義務 4 事業主の健康管理措置に従う義務  ○ 職場の衛生状態保持義務  ○ 衛生的作業義務  ○ 衛生施設・用具等の使用義務  ○ 保護具等着用義務  ○ 立入禁止・作業制限等を守る義務  ○ 職場体操その他健康指導に従う義務  ○ 適切な業務、時間の自己配分義務 5 私生活上の健康保持・増進義務 6 療養・治療義務 等があります。
 これらのことを労働者が自己保健義務として違反したときは、事業主の責任を否定したり、相当の過失相殺又は過失相殺を類推した減額が行われます。
Qパートタイマーにも健康診断は必要なのですか。
A→パートタイマーも健康診断は必要です  パートタイマーも「常時使用する者」である場合には、安衛法第66条によって、定期的な健康診断が義務づけられています。
ここで「常時使用する者」というのは、1 期間の定めのない労働契約によって使用される者(期間が決められていても、契約更新によって、一年以上使用されることが予定されている者及び一年以上引き続き使用されている者を含む)、2 一週間の所定労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間数の四分の三以上であること、のいずれの条件も満たす者であるとされています(平5・12・1 基発663号)。
 つまり、一年以上の雇用が予定されており、通常の労働者の四分の三以上の所定労働時間数働いているパートタイマーの人たちは定期検診を受けることが義務づけられているのです。
→雇入れ時及び定期の健康診断は、事業主に義務づけられています  健康な時はとかく健康診断などは面倒だという考えになりがちです。
しかし、安衛法第66条第1項は「事業所の規模・業種を問わず、事業所は年一回の健康診断を実施しなければならない」と定めて、その実施を事業主に義務づけています。
この一般の健康診断は、労働者を雇入れるときと、雇入れ後一年以内ごとに一回定期に行わなければならないというものです。
 健康診断は、労働者の健康状態を把握して適切な健康管理を行っていく材料とするとともに、労働者の健康状態の異常などから、職場の健康管理上の問題点を発見して、その改善を適切に行っていくためのものです。
 したがって、たとえ短時間のパートタイムだからといってこの健康診断を受けないわけにはいきません。
労働者の健康は、自分自身で管理するという姿勢で、与えられたいい機会と考えて、面倒がらずに進んで診断を受けた方がいいでしょう。
→どんな時にどんな内容の検診が必要なのでしょうか  安衛法が定めている使用者が実施しなければならない一般検診は次のようになっています。
1 雇入れ時の健康診断(安全衛生規則第43条) 2 定期健康診断など(同第44条及び第45条) 3 海外派遣者の健康診断(同第45条の2) 4 その他の健康診断(同第46条及び第47条)  そして、雇入れ時の健康診断及び定期健康診断については、原則として以下の項目について実施することになっています。
1 既応歴及び業務歴の調査 2 自覚症状及び他覚症状及び有無の検査 3 身長、体重、視力及び聴力(1000ヘルツ及び4000ヘルツの音に係わる聴力をいいます。
)の検査(雇入れ時の健康診断は、身長、体重、視力、色覚及び聴力の検査) 4 胸部エックス線検査(定期健康診断は胸部エックス線検査及び喀痰検査) 5 血圧の測定 6 血色素量及び赤血球数の検査 7 血清グルタミックオキサロアセチックトランスアミナーゼ(GOT)、血清グルタミックピルビックトランスアミナーゼ(GPT)、及びガンマーグルタミルトランスペプチターゼ (γ-GTP)の検査(肝機能検査) 8 血清総コレステロール及び血清トリグリセライドの量検査 9 尿中の糖及び蛋白の有無の検査(尿検査) 10 心電図検査 →健康診断時間の賃金は事業主が補償  健康診断を受けた時間は、労働時間で賃金が補償されるのか、それとも個人のための時間だから賃金が補償されないのかという問題があります。
仕事に関連した特殊な健康診断(法律で定められている)の場合は、仕事ですから当然に賃金補償の対象になります。
しかし、一般の健康診断について法律は、必ずしも使用者に賃金の支払を義務づけてはいません。
 しかし、法令では次のように述べて、支払いがされることが好ましいとの指示をしています。
「受診に要した時間については、当然には事業主の負担すべきものではなく労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業主が支払うことが望ましいこと」(昭47・9・18 基発602号)。
 なお、法律で義務づけている健康診断などは、事業主に実施の義務を課している以上、原則としてその費用も事業主が負担することになっています。
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